平成29年度ブロック別町内会活動研究大会の報告

 
 

大会テーマ 「安心・安全な地域づくりをめざして」

 
 

 

 

道央ブロック

 

道東ブロック

 

 平成29年度ブロック別町内会活動研究大会が下表のとおり、道内4ブロックにおいて、町内会関係者約660名の参加を得て開催されました。
 大会は、本会からの基調説明、続く、講演はブロック別に講師を招き、「健康で安心して暮らせる地域づくり」をテーマにご講演いただきました。
 その後の分科会は、各開催地で選択したテーマ別に、実践報告を受けて協議を行い、最後に分科会報告が行われました。

 

ブロック

開催日

開催地

参加対象地域

参加者

道央

10/26~27

新ひだか町

石狩・空知・後志・日高

67名

道南

10/18~19

洞爺湖町

渡島・桧山・胆振

212名

道東

9/26~27

北見市

網走・十勝・根室・釧路

253名

道北

10/3~4

名寄市

上川・宗谷・留萌

131名

 

講演の概要 テーマ「健康で安心して暮らせる地域づくり」

 

 

◆道央・道北ブロック

 

講師:播本 雅津子 さん
(名寄市立大学保健福祉学部看護学科教授)

 

 少子高齢化や核家族化などの地域社会における課題と北海道の地域社会の特徴などを踏まえ、ご自身の町内会役員としての活動をとおしたお話をいただきました。町内会役員の担い手の見つけ方のほか、見守り活動では「自分が見守ってもらえるような人になること」など、町内会活動に活かせる具体的なコツについて、笑いとともに壮快にお話いただき、町内会活動を支える関係者のみなさんに元気が出るエールをいただきました。

▲講師 播本雅津子さん

 

道南・道東ブロック

 

講師:上田 知行 さん
(北翔大学生涯スポーツ学部スポーツ教育学科教授)

 

 高齢者が長く健康を保つために、町内会活動などで日常的に体を動かすことの大切さをお話いただきました。また、人は歩かなくなると、骨や筋肉、関節が少しずつ衰え、歩けない、立ち上がれないなどの要支援・要介護の状態となる傾向があるため、歩幅を広くとるウォーキングのすすめや転倒・つまずきの予防など、簡単な体操を交えながら、健康で暮らせる地域づくりに役立つお話をいただきました。

▲講師 上田知行さん

 

テーマ別分科会協議の報告

 

 

分科会テーマ① 「町内会の福祉活動について考える」

 

◆道央 ~自治会が福祉の取組みを組織化、日常生活も支援~

 

 はじめに、新ひだか町旭町3自治会より、住民助け合いのために設立した「旭ネット」の活動について報告がありました。旭ネットでは、活動の趣旨に賛同した住民を協力会員として、日常生活に援助が必要な方への見守り活動、病院や買い物の付き添い、自宅の除雪や草刈りなどの支援をしています。さらに、旭ネットを運営する福祉部が中心となり、援助が必要な方の状況を把握するカードを作成、福祉委員会を定期的に開き、情報を共有して支援のあり方を話し合っているとの報告でした。その後の意見交換では、町内会の除雪ボランティアがひとり暮らし高齢者などの冬期の暮らしを支えている事例、毎年75歳以上の高齢者に赤飯などを配りながら様子を確認し、地元の関係機関と情報を共有している事例などが紹介されました。また、個人情報保護法の影響で関係機関から住民の情報を得づらくなったという意見があり、町内会で要援護者調査を手上げ方式で行い、福祉や防災に活用しているとの報告がありました。

 

◆道南 ~きずな安心キットで見守り・助け合い~

 

 はじめに、登別市幌別鉄南第5町内会より、社会福祉協議会などと協力した小地域ネットワーク活動について報告がありました。町内会では、地域の高齢者などに、身体状況や緊急連絡先を記入する「きずなづくり台帳」と救急医療情報などが入った「きずな安心キット」を配付。配付した世帯を地図にまとめ、声 かけ・見守り活動などを行うとともに、きずなづくり台帳に書かれた内容は、本人の同意を得て市の避難行動要支援者名簿に登録し、災害時の情報伝達・避難支援などに役立てているとの報告でした。その後の意見交換では、個人情報保護法の改正にあたって規約を改正し、管理体制を整備しているとの事例が紹介されたほか、守秘義務を負う民生委員児童委員と町内会の福祉活動との連携が難しいとの意見、これからは見守りだけではなく、買い物支援などの日常生活支援が有償でも必要になるとの意見がありました。

 

◆道東 ~サロン活動で仲間づくり・健康づくり~

 

 はじめに、北見市末広町平和第2町内会より、町内会の誰でも参加できる「いきいきサロン・平和ランチの会」の設立から取り組みについて報告がありました。このサロンは、地域の誰もが気軽に立ち寄れるサロンを希望する地域の声を受けて、昨年3月に設立。現在は、ランチの提供をはじめ、ふまねっと運動や頭の体操、紙芝居、熟語を作ろうなど、多岐に渡る内容でサロンを運営しているとのことでした。今後の課題として、関係機関との連携強化やサロン継続のための人材育成にも力を入れていくそうです。参加者からの「サロン活動の内容についてアイディアが行き詰まることはないか」との質問には、「1年で忘れてしまうので、大丈夫!」とのユーモア溢れる回答がされました。その後、町内会の福祉活動として、サロン活動やお茶会などについて意見交換がされたほか、介護保険制度の改正により、地域での支え合いに期待がされているので、地域で苦労している状況を行政などに伝える仕組みづくりが必要との意見がありました。

 

◆道北 ~住みよい地域づくりはみんなで協力しながら~

 

 はじめに、名寄市1区町内会から「サロンはなぞの」で実施している春・秋のウォーキングによる健康づくりや交通安全講話のほか、オセロやカラオケなどを楽しみながら、会員同士の交流を深めているとの報告がありました。また、名寄市東風連町内会からは、閉校した小学校を利用して、運動会やパークゴルフ大会、子ども相撲など、小学校と地域との交流について報告があり、さらに、名寄市立名寄東小学校の取り組みとして、町内会長や民生委員児童委員などと連携して子ども達を見守る安心会議について報告がありました。その後の意見交換では、各地域でのサロン活動や子ども会、福祉パトロールの事例紹介があり、参加者による活発な意見交換が行われました。

 

分科会テーマ② 「町内会の防災活動について考える」

 

◆道央 ~災害に備えて訓練を続けることが大切~

 

 はじめに、新ひだか町本桐第4自治会より、自主防災活動についての報告がありました。自治会では、8年前に自主防災組織を結成し、防災や応急手当の研修会、避難訓練や炊き出し訓練などを実施しています。昨年の8月の台風災害時には、道路の冠水で地域の道路が寸断され、自主防災組織が避難支援や情報収集を行ったとの報告でした。その後の意見交換では、自主防災組織の結成と活動には市町村ごと町内会ごとに温度差があるとの意見、要援護者の個人情報が行政などから開示されないとの意見のほか、各町内会長宅に防災無線が設置されていて速やかに対応できているとの事例が紹介され、最後に、東日本大震災の教訓を踏まえると、参加者が少なくても防災訓練の継続はとても大切であることが確認されました。

 

◆道南 ~自主防災組織で避難生活のルールづくり~

 

 はじめに、洞爺湖町泉区自治会より、防災訓練の報告がありました。自治会は有珠山噴火による避難を経験しており、自主防災組織を立ち上げ、防災研修会や防火訓練、避難訓練、非常食の試食会などを行っています。また、噴火災害時に避難が長期化しても円滑な生活が送れるよう、避難所でのルールづくりに取り組んでいるとの報告でした。その後の意見交換では、災害時要援護者の避難支援について話し合われ、車いすの方の避難支援や町内会未加入世帯の状況把握について意見が交換されたほか、避難に消極的な要援護者もいるので、災害時の早目の避難を日ごろから啓発する必要があるとの意見がありました。また、関係団体と協働で自主防災組織を立ち上げ、日ごろから住民の防災意識向上に努めていたので、昨年の台風による河川増水時にはスムーズな対応ができたとの事例が紹介されました。

 

◆道東 ~安心して暮らし続けるために 災害に備えた取り組みを~

 

 はじめに、北見市緑町緑友町内会・緑町自主防災会より、消火訓練ゲームや避難所運営(HUG)研修会などの取り組みについて報告がありました。また、冬の大規模停電を想定した避難所体験会を実施し、ブルーシートやアルミマット、段ボールでの就寝体験や災害用炊飯袋(ハイゼックス炊飯袋)を使用した炊き出し訓練をとおして、子どもや要支援者が暖を取ることの大切さや避難場所の設置判断の難しさを体験したそうです。全体を通して、個人情報の管理について意見が多くあり、個人情報の取り扱いについては、何度も役員が説明に訪れるなどをして、町内会での信頼関係を築いた上で、個人情報を管理していくことが大事であることが確認されました。

 

◆道北 ~いつ起こるかわからない災害に備えて万全な準備を~

 

 はじめに、名寄市全体の防災活動と、名寄市西町3区町内会自主防災団の活動について報告がありました。名寄市では、各町内会長が北海道防災マスター認定研修を受講しており、冬の災害を想定した避難所運営訓練などの防災訓練を毎年実施しています。さらに、西町3区町内会の自主防災団で実施した天塩川の洪水と堤防決壊を想定した本番さながらの訓練の様子について報告がありました。その後は、参加者による各地域の防災組織についての報告のほか、防災パトロールや強風時の空き家対策、Jアラートを含めた住民周知についての情報交換が行われました。「災害が少ないまち」と思われていた地域でも、ここ数年に道内で起きた災害を踏まえ、住民の防災意識を高めて災害に備えたいということが改めて確認されました。

 

分科会テーマ③ 「町内会の育成について考える」

 

◆道央 ~全世代が参加できる町内会活動をめざして~

 

 はじめに、新ひだか町歌笛地区連合自治会より、地区の子どもや親世代との多世代交流事業「こども・おとな企画」について報告がありました。この事業は、学校の統廃合で児童がスクールバス通学になり、子ども達と住民とのふれあいが激減したことをきっかけに始められ、そば打ち体験やカルタ、たこ焼きや綿あめの屋台、10mの長いのり巻きづくりなど、子どもと親世代と高齢世代が一緒に楽しめる企画を実施しています。事業に参加した住民が中心となり、地域の要援護者の見守りを始めるなど活動が広がっているとの報告でした。その後の意見交換では、中高生が町内会役員を担っている事例、小学生が町内会館に合宿して体験学習をしている事例、地域の大学生が町内会活動に参加している事例などが紹介され、全ての世代の住民が町内会活動に参画できる環境をつくることが大切であることが確認されました。

 

◆道南 ~防災活動をきっかけに地区連合会が活性化~

 

 はじめに、室蘭市東地区町会連合会より、地区連合会の活性化について報告がありました。東地区町会連合会では、役員を始めとする町会員の高齢化などで活動が停滞気味になっていました。しかし、東日本大震災を受けて、地区が太平洋に面し海抜が低いことに危機感を強め、いち早く行政と協議して大規模津波避難訓練を実施。そこでの団結が引き金になり、地区連合会が、サマーフェスティバル、海岸の清掃、小学校と連携した花壇づくり、高齢者の見守りなどに積極的に関与して活動し、今では、PTAなどの若い世代も含め、行事の参加者と協力者が増えているとの報告でした。その後の意見交換では、宅建協会と協定を結び町内会加入促進に取り組んでいる事例、活動を知ってもらうために未加入世帯にも行事参加を呼びかけている事例、地域に葬儀社が無く町内会で葬儀委員会を作り行政も協力して対応している事例が紹介されたほか、自治体が町内会加入促進の条例を制定すべきとの意見、まずは自分達が町内会を良くしていくという強い決意を持つことが大切との意見がありました。

 

◆道東 ~役員を補佐する体制で、みんなが支え合う~

 

 はじめに、北見市北見自治会連合会より、地域づくりに重要な組織である町内会の活性化を図るために実施した、各町内会長へのアンケート調査について報告がありました。このアンケート調査の結果を受けて、町内会運営ガイドブックを作成・配布。さらに、自治連・北見市・宅建協会の三者間で「北見市における町内会加入促進に関する協定」を締結したとのことです。また、アンケート調査の結果から、役員の高齢化や役員のなり手不足で悩んでいる町内会が多いほか、若い世代への町内会加入の働きかけが重要と考えられていることが分かりました。その後の意見交換では、町内会の人材育成のために、顧問や相談役が会長を補佐し、各班では副班長をおいて班長を補佐する体制を取っている事例が報告されたほか、町内会は人と人とのつながりが大事であることとあわせて、町内会に入っていて良かったことを伝えていくことが必要との意見が多くありました。

 

◆道北 ~多くの人で支え合い、町内会活動は楽しい思い出に~

 

 はじめに、名寄市北新区町内会より、子ども育成会と連携した町内会役員の担い手づくりについて報告がありました。役員の担い手を育てるために、町内会の子ども育成会の役員は、幼稚園や保育所の行事、小学校のPTA活動を通じて、町内会行事の参加を呼びかけているとのことです。また、町内会の子ども会活動で楽しんだ思い出をもった方が、大人になって町内会活動を積極的に手伝ってくれているとの報告がありました。その後の意見交換では、町内会の副会長を固定し、班から会長を1年ごとに選出することで役員の担い手不足を解消している事例報告のほか、町内会役員を一度引き受けるとなかなか退任のタイミングが難しいと考えていたが、先程の播本先生の講演を聞いて、無理に世代交代や退任を考えなくても、まだまだ町内会役員を続けようという明るい気持ちになれたとの発言がありました。

 

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